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「くひひ、確かに状況は悪い。でもね、ぼくはいつだって這い蹲って生きてきた。ぼくにとってこんなのは逆境ですらないし、まして苦境でもない」 そんな強がりにしか聞こえない事を言う。 「妄想を現実にする気ですか――させませんけど」 「いや、妄想は現実にしない。ただ少しだけ“修正する”だけさ」 べろり、と舌を出す嘘月。その舌には大きく“嘘”と書かれていた。 まさか――嘘八百!? 嘘八百使いなのか!? 「“ぼくの足は動かない”」 そう呟くと、嘘月は自然な所作で“立ち上がった”。 え? 動かない、動けなくなったって言っていたのに? 「え? どうして、立ち上がれる――」 「ん? やれやれ、君は何を言っているんだい? ぼくの名前は何だったかな? ウソツキだよ? そんな奴の言葉を馬鹿正直に信じたら駄目じゃないか。ぼくは――“嘘を吐いた”だけだよ」
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