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そんな風に開き直られても、挨拶に困る。 ただ、言っている事は間違ってない。敵にわざわざ本当の事を、真実を伝える意味なんて殆どない訳で、嘘を吐いたって別に咎められたりしないけれど。 「ふぅ、さてと。“針月も疼月も咬月もだらしないな、ボロボロにされちゃって”」 嘘月がそう言うと、ズタボロになって倒れていた針月が、壁に刺さっていた疼月が、天井からぶら下がっていた咬月が、傷一つ衣服に汚れ一つない状態で僕らの前に現れた。 まるで、何事も無かったかのように。 「これは!? まさか、本当に“全てを無かった事にした”のか!?」 出来ないって言っていたのに―― 「だからさ。ぼくの名前は何だった? 真実なんてぼくが言うと思うかい? ぼくなんかの言葉を信用しちゃダメだよ。ぼくは『嘘から出た真実(エイプリルフール)』っていう“嘘と事実を入れ替える”事が出来る“罪”も持ってる。それだけ」 “嘘と事実を入れ替える”能力――『嘘から出た真実(エイプリルフール)』 確かに、こいつは闇憑きの中で最も恐ろしい男なのかも知れない。
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