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両手を包帯でぐるぐる巻きにしている男、『宵闇 咬月』。その左腕の包帯が、“内側”から引き千切られる。 露わになる左腕。 それは、まさしく異形。 口、口、口、口口口。無数の“口(くち)”で出来た左腕だった。 その口からは鋭く尖った歯、と言うよりの牙が数多に生えていて、それが別々に蠢いてガチガチガチと音を鳴らしている。 「“邪悪な左手(イビルハンド)”ぉぉぉおおおっ!!」 そんな異形な左腕で大きく弧を描き、満月を掻く。 無論、引っ掻かれるでは済まない。食い千切られるだろう一撃。 だけど、それも満月には届かない。 渾身の引っ掻きは空振り、その上勢い余ってまるで見えない誰かに一本背負いされたみたいに、ぶっ倒れる咬月。 白目を剥いて、口からは泡を吹いて、びくびくと四肢を痙攣させている。
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