41人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
彼女との出会い。
それは、確か窓の外のようにパラパラと小雨が降っていたように思う。
いや、もっと降るというよりも落ちてくるような土砂降りだった……。
違う、雨なんて降っていなかった。突き抜けるような雲一つない晴天の日だった。
それとも、晴れでも雨でもなく沈むような曇天だったのかも知れない。
曖昧だ。彼女のことは鮮明に覚えている。
彼女は、僕にとって友達で、家族で、兄妹で、姉弟で、恋人で、他人。
誰でもあって、誰でもない空白。
思い出も、存在さえも、何もかもが空白。
それが“空白の虚実(くうはくのきょじつ)”『枝郷 神楽』だ。
最初のコメントを投稿しよう!