002

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不意に、ぱぁんっ! という破裂音が響いた。 何が起こったのか、僕にはすぐには分からなかったけれど。 どうやら、沙夜が僕の頬を叩いたらしい。 「私と居るというのに他の女のことで頭がいっぱいとは、いい御身分ね? ゆとり」 剣呑な眼差しで、僕を射抜く。 謝罪を口にしようとしたけれど、上から降ってきた言葉に遮られてしまった。 「あららぁ、痛そうやね。大丈夫なん?」 天井に立つ(ぶら下がっている訳では無く、床に立つように立っている)謎の人物から、心配そうに訊ねられた。 「大丈夫よ、オジカちゃん。これは所謂“痴話喧嘩”というものよ。本で読んだことがあるわ」 そう言ったのは、僕たちの前に居る顔色の優れない物憂げな浴衣姿の女性。 「へぇ、物知りさんやね。シダカちゃんは」 「私も見るのは初めてよ。オジカちゃん」
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