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夢を、夢を見ていた。
とても切なく、とても哀しい夢を。
夢の中の僕はただの傍観者で、何をするわけでもなく何が出来るわけでもなく、ただ流れる景色を眺めていた。
日常風景に時折非日常風景が混じる、そんな風景を。
朝の教室、昼の屋上、夕方の帰り道。
その景色の中に常に存在する美しく儚い少女。
影のような、暗闇を切り抜いたような、シルエットのような存在感の少女。
彼女が、春の暖かく柔らかな陽射しのような笑みを浮かべて――誰かの、隣に佇む。
僕が見た事の無い、沙夜の笑顔。
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