005

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黒い革製のそれには、錠前が付いており外せないようになっているみたい。 なんて、そんな風に彼女を観察していると、目が合った。 燃えるような、焼き尽くすような、その赤い瞳に射抜かれる。 神楽は破顔し(凄く嫌な感じの笑顔だ)こちらに歩み寄ってくる。 「久しぶりだな、我が半身“煉獄の劫火”。元気そうで何よりだよ」 と、のたまった。 「うん、久し振りだね。“神楽”こそ、元気そうで何よりだ。それと、僕はもう“煉獄の劫火”じゃない。ただの『ゆとり』だよ」 間違えないでね? と、僕は返した。 “あの時のまま”の神楽に、僕はやはり驚いたけれど、でも僕はもう“あの時のまま”では無い。 夢からは覚めたのだから。
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