005

12/27
前へ
/300ページ
次へ
それでも―― 「あなたに教えてあげる義理も義務も無いわ。それよりも、私のゆとりを変な名前で呼ばないで頂戴」 「変な名前? 彼の真名すら知らないとは哀れだな、可哀そうな女だよ。お前は。それにしても“私のゆとり”か。ふむ、なるほどなるほど。大体把握したよ。それなら、俺様ちゃんはお前に礼を言わなければならないな」 「はん、あなたに哀れんでもらうほど私は落ちぶれてなどいないわ。それに何? 礼? 一体何の事を言っているのかしら?」 「今までありがとう。俺様ちゃんの“代わり”に“煉獄の劫火”の隣にいてくれて。でも、今日でその“役目”も終わりだ。“御苦労様”」 「随分と上からものを言うわね? 誰があなたごときの代わりなんてするの? ふざけないで頂戴」 「ふざけてなどいないさ。事じちゅ……じ、じ、つ、を述べたまでだ」 悪意の黒い炎と敵意の赤い炎が視界の端にチラチラと見える。 こわいよー。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加