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ここ数日毎日のように見ていた悟さんと仁さんの漫才 のようなやり取りが人目を憚(ハバカ)らず続いているのを尻目に、数歩後退りメールの内容を確認した。
そのメールの内容とは
冒頭のおざなりな挨拶は戸田らしく、空港まで迎えに行くから悟さんを捕まえておいて欲しいとの簡潔な内容だった。
まるで悟さんを動物のように捕まえてという彼の表現に思わず笑いそうになったが、口元を引き締め短く『了解』とだけ返信しなに食わぬ顔で電源を落とした。
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思い起こすと長いようで短かった今回の北海道出張。
数年ぶりに掛かってきた懐かしの人物からの一本の電話から始ま った昼ドラ張りの今回の憎愛劇。
頼まれた依頼は達成したが、不本意な結末に終った事件が悔やまれる。
「黒田は事務所まででいいの?」
北海道の道路事情とは雲泥の差がある進んでは止まるを繰り返す都会の高速道路。
戸田に捕獲された悟さんと共に車に乗り込み、車窓から見える今は異様に思えるこんな光景も何日かすれば当たり前になるのか‥と思うと無意識に頬が緩む。
「ああ、悪いな俺まで乗せてもらって」
「ううん、気にしないで♪」
相変わらず飄々とした口調の戸田はウインカーを上げると慣れたハンドル捌きで車線を変更する。
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