宅配物

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      「と、ところで仁さんはどうしてこっちに?観光とか何か?しばらくこっちにいるんなら」 「あ、そうそう!それなんだけど、今回こっちには出版社の祝賀パーティにお呼ばれしてて、書籍の出版祝いを兼ねてなのかついでなのか握手会やらサイン会で駆けずり回るみたいなのよ」 出版社の陰謀よ!と見慣れた光景でもある鞄をガサガサ漁りシガレットケースを取り出す。 仁さんの上京に合わせて出版社が企画したらしく、先に聞いていたら来なかったと、咥えたタバコに火を着ける。 「そうなんだ。作家ってのも大変なんだな」 「そーなのよ!あー、腹立つ!」 更なる追撃を逃れる為話題をすり替える事に成功した俺は、静に額の汗を拭うが、そんな俺の姿を見た黒田が鼻で笑ったのを見逃さない。 畜生、黒田の野郎後で覚えておけよ! といっても、効果的な仕返しが出来る訳もなく、そんな事したなら間違いなく返り討ちに合うのは火を見るより明らか。 募る話もあったが、ホテルのチェックインがまだだと言う仁さんは 「ま、久我りんの驚いた顔も見れたし!話は後でね♪もちろん朝まで飲み明かすから黒田くんも付き合いなさいよ」 「ええ、是非」 もちろん拒否するつもりはないが『も』と言ってるあたり俺には拒否権はないらしい。 「あ、百合ちゃんだっけ?あなたも参加要員に入ってるからね」 と、百合にパチリとウインクする仁さん。俺には「えー!」とか言う癖に、満面の笑顔を浮かべ「はい!」と元気に返事をさせ手懐けるあたりはやはり強者。 「解った久我りん?」 「は、はい、お伴します」 .
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