第一幕

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知ってるかい? 街は生きているんだ。 母親に抱きついている赤子や、眠たそうに授業を受ける学生や、残業続きのサラリーマンなんかと同じように。 ただ、まあ、当然だけど―――動物のように鳴くことはない。 それでも、街は意思表示をするんだ。 何も大気を震わせる事だけが意思表示じゃないだろう? 街はね、自分の中を闊歩する人間たちを眺め、時には弄ぶんだ。 面白ければ笑うし、退屈だったらため息をはく。 映画を観ている観客のようにね。 そんな街は常に変化を求めているんだ。 だからね、例えば街で、何か奇妙な事に出くわしたりしたら―――街に遊ばれたと思って、割り切るんだ。 そうだね、それで――― できることなら、一緒に遊んでやるといい。
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