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彼女が歩き続ける、荒涼という表現でさえも表しきれない、渇きと虚しさと絶望がどこまでも続く世界。
デジタル式腕時計の表示が、彼女がこの異様な世界に来た時間だとしたら、彼女はもう12年以上この世界を歩き続けているという事になる。
水も食料も太陽も、そして彼女以外誰ひとりとして人間が存在しない世界。
そんな世界を一人歩き続ける羽目になってしまったら、誰もが尋常ではいられないだろう。
中には絶望の余り発狂したり、自ら命を絶とうとする者も出て来るに違いない。
だが彼女は、そんな世界を実に12年もの間歩き続けている。
水も食料も太陽も、そして自分以外の人間が誰ひとりとして存在しない世界を、虚ろな表情のまま彼女は黙々と歩き続けている。
だが、そんな状況に在っても彼女は、発狂もしなければ自ら命を絶とうともしない。
否、例えしたくても出来ないのだ。
なぜなら彼女が今歩いている世界は、人間界で言うところの冥土なのだから。
「………」
彼女がふと何かを呟く。
だがその声は、彼女の渇ききった唇から出た瞬間に、吹きすさぶ風によりたちまち掻き消されてしまった。
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