第1章

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 自宅も兼ねているカメリアはもうすぐそこに見えているのに、なかなかその距離は縮まらない。ずっと遠くのままだ。  だんだんと俺の足は早足になり、走った。バカみたいに、がむしゃらに。  子供のように腕を前後に振って走って、そして勢いよくドアを開けて中に入ると、後ろ手に再び鍵を閉めた。  久々に走ったせいか、息があがり心臓がバクバクと激しく脈打っている。学生の頃のように、とはいかないか。  俺は胸を押さえながら3階の自室へ駆け込み、そこで力尽きてベッドへと倒れ込んだ。  あ、やばい。明日の準備をしていない。  やはりカフェの経営は俺1人ではキツいし、バイトでも雇うか……いや、雇いたくてもバイト代を払う余裕がないな。  なんてことを考えているうちに意識が朦朧としていく。まぁ、明日考えればいいかと瞼の力を抜くと、俺の意識はあっけなく飛んで行ってしまった。  自由に、ただ何となく生きてきたこの3年間。このままずっと、平和な毎日が続いていくものだと思っていた。昨日までは。  しかし実際は違った。  俺と、この世界の均衡は、すでにもう壊れ始めていたんだ。
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