231人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
――PM9:06――
カメリアには客がそこそこ集まり始めたが、ミアリはなぜかまだ来ていない。
「おい、マスターさんよ。姫は今日はいねぇのか?」
「来るはず、なんですが遅刻です。……俺にもわかりません」
「わかりません、じゃねぇよ。こっちは金払ってやってんだ、姫が来ねぇんなら俺は帰るぜ」
どいつもこいつも姫姫って、ミアリだけが目当てで来ているんならこっちだって願い下げだ。第一、ここはそういう店じゃない。
帰りたければさっさと帰れ。ただし、ドリンク代はちゃんと払って行けよ?なんなら多めに置いて行ってもいいんだぜ?
しかし、ミアリもこれは遅すぎるな。
また何か無駄な気合でも入れて時間がかかっているのか、もしくは体調を崩して来れないのか。ハンターの仕事が長引いているのか……
いずれにせよ、だんだん心配になってきた。様子を見に行こうにも、カメリアを離れるわけにはいかないしな。こんな時、他の従業員がいれば使いっ走りにできるのに。
「あら、せっかく来てくれたのに、そんな寂しいこと言わないでよ。あたしは連絡もなく休んだりしないんだから」
そう言ってベルを鳴らしながらドアを開けたのは、笑顔だがどこか疲れているように見えるミアリ。心配になって時計に目を向けた時だった。
原因は多分、後ろにいる人物だろう。彼女の背後で、大きな人影がユラリと動いた。
最初のコメントを投稿しよう!