第1章

4/19
前へ
/246ページ
次へ
「僕の特等席が誰かにとられてしまうかもと思ってね。マスター、いつものよろしく」  そう言ってカウンターの端の席に座る爽やかな笑顔を振りまく青年は、ルキ・フェノアン。  この人こそ、モデルや俳優になればファンが桁違いに殺到するであろうスーパーイケメン。しかも、性格も良しときたものだ。  スラリと背が高く脂肪の代わりに程よく筋肉がついている。青みがかった灰色の髪はまっすぐサラサラで、細くも大きくもない目はエメラルド色。  化粧を施せば綺麗な女性に見えてしまうであろう整った顔立ち。顎のラインはシャープで、眉は細く鼻筋はしっかり通っていてまさにモデル。  誰にでも愛想よく、爽やかを擬人化させたような好青年。さっきの女子高生達も、ルキさんに出会えばすぐに鞍替えするんだろ。  この店を始めた頃からの常連客で、毎日かかさず紅茶を飲みに来てくれている。いつも話し相手をしてくれるけどさ、仕事っていつやってるんですか……?  俺の料理の腕前が上がるように、評価するため。それから、ルキさん曰く「マスターに会いたいから」らしい。 「ルキさんほど早くここに来る人なんていませんよ。はい、お待たせしました」  俺は苦笑しながら紅茶と、注文になかったものを彼の前に出した。 「あと、新作のシフォンケーキを焼いてみたので、試食してみてくれませんか?もちろん、この分のお代はいりません」  昨日の閉店後に焼き上げておいたシフォンケーキには、やや弛めに泡立てた生クリームを添えている。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

231人が本棚に入れています
本棚に追加