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騒がしい教室。 夏の香り。 蝉の声。 少女は、分厚い物語を読む。 主人公は、女性。 親に捨てられ、友達も少ない女性は、国を守るために剣を抜く。 愛する王子は、自分の想いに気付かずに国の平和を願う。 気付いてもらえなくても、仲間に非難されても己の意思を貫き、人々を護り抜く強い女性。 少女は、女性に憧れていた。 自分とは違う物を持つ女性は、目標でもある。 「花村さん」 声をかけられて、本で鼻から下を隠しながら、相手を見る少女は、花村絵美。 気弱で、人と付き合うのが苦手である。 根暗とも言われて、友人も少ない。 「な、なんですか?」 「あのさ、班決めの事なんだけど」 相手から誘ってくれたのだと喜び顔を上げる。
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