1

5/11
前へ
/71ページ
次へ
夏季合宿についての説明を聞きながら、斜め前に座る小百合を見た。 どうして、私なのだろうと思いながら小説ノートを指で叩く。 これは癖なのかもしれない。 考え事をすると、何かを突っつく。 長年の癖だ。 エミーナも同じ癖を持っているのだろうか? ぼんやりしていると、長い黒髪が視野に入る。 「夢原さん」 「小百合でいいよ、どうする?」 「え?」 「見学場所」 ハッとして、地図と冊子を取り出す。 森の中にある泉を見てみたいが、小百合は小物類が売っている場所がいいのだろう。 勝手に思いながら、小百合が何処に行きたいか質問する。 「貴女は?」 「え?」 急に、質問を返されて頭が混乱する。 「花村……絵美は、何処に行きたいの?」 聞き返されて、冊子のページを捲りながら泉に行きたいと言う。 冊子を取られ、泉の写真を見つめる小百合に不安げな表情を向ける。 「いいんじゃない?」 見学予定の用紙に、泉の場所を書きながら答えられて嬉しい気持ちになる。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加