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夏季合宿についての説明を聞きながら、斜め前に座る小百合を見た。
どうして、私なのだろうと思いながら小説ノートを指で叩く。
これは癖なのかもしれない。
考え事をすると、何かを突っつく。
長年の癖だ。
エミーナも同じ癖を持っているのだろうか?
ぼんやりしていると、長い黒髪が視野に入る。
「夢原さん」
「小百合でいいよ、どうする?」
「え?」
「見学場所」
ハッとして、地図と冊子を取り出す。
森の中にある泉を見てみたいが、小百合は小物類が売っている場所がいいのだろう。
勝手に思いながら、小百合が何処に行きたいか質問する。
「貴女は?」
「え?」
急に、質問を返されて頭が混乱する。
「花村……絵美は、何処に行きたいの?」
聞き返されて、冊子のページを捲りながら泉に行きたいと言う。
冊子を取られ、泉の写真を見つめる小百合に不安げな表情を向ける。
「いいんじゃない?」
見学予定の用紙に、泉の場所を書きながら答えられて嬉しい気持ちになる。
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