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高鳴る胸。 震える手で、ノートを差し出す。 見て欲しくて、共感して欲しくて差し出した。 「これは?」 「私の世界!」 ノートが手から離れる。 読んでいる。 小百合が読んでいる。 感想が聞きたい。 ドキドキが止まらない。 「おもしろい」 小百合の笑顔に、心の鍵盤が鳴り響く。 嬉しい。 嬉しい。 嬉しい。 涙が溢れる。 「ちょ、絵美?」 戸惑う小百合に、首を横に振って涙を拭う。 「違うの、嬉しいの」 違う。 嬉しい。 を繰り返して、ボロボロ涙を流した。 認められた気がした。 自分の世界を認められた気がしたから、涙が出てきたのだ。 おもしろい、言葉が嬉しくて。 胸が熱くて。 「……絵美は凄いよ」 「え?」 「私は、自分の世界を作れないから、さ」 どこか寂しげな、小百合の表情に何も言えなかった。
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