桜と少女

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校門のすぐ近くには桜の木々が咲き並び、特に校門の手前に立つ桜は他のどの桜よりも美しく、麗しかった。 そしてそこには対するように、桜の木の前に立つ人影があった。 第一印象は黒い、それだけだった。 夜の、街灯さえ無いこの場所で、その闇より尚黒いその髪は、その黒さ故に逆に目立っていた。 そして目の前には闇の中、それでも輝きを失わないほどに色彩を放つ桜。 黒と薄紅のコントラストに無意識に手が動き、シャッターを構え、そして撮っていた。 カシャッ…。 静寂の中、時が止まっていたその場所で、シャッター音が静寂を破り、時を動かし始めた。 黒髪の少女はこちらを振り向き、桜の木の枝がサザァと揺れ、花びらを舞わせる。 花びらは、彼女へ吹き付け、視界を遮る。 一も二も無く駆け出していた。 彼女が何かを叫んだ気もしたが、それすら気に止めず、ひたすら走り続けた。
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