~それぞれの想いと思惑~

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「信じてる、か。それは何を訊いてる?」 「一良くんが本当に灯夜と別れたいか、だよ」  分かっているくせに。そう内心でごちるけれど、灯夜の心境を考えると口に出しては言えなかった。  空は澄み渡り、ちらほらと綿雲が流れている。いい天気だった。    暫し押し黙ってから灯夜は静かに告げた。 「……正直に言うと分からない。あいつは、幸せだったと言った。けど、なら何故別れたがる…?やっと、やっと会えたのに。何で別れをもう一度告げる必要がある?」  それは独白のように。ひどく寂しい声音で発せられた。膝を寄せて顔を埋める灯夜を見ていると人間味が深く感ぜられていいなあ、と思った。 「もう一度、一良くんと話してみたら?」 「……それができたら、な」  苦虫を噛み潰したような表情。 「迂闊には近付けない。誰が見てるか分からないからな」  ああ、そういえば。と溜息を吐く。 「灯夜のところは穏健派は少なかったね…」
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