被害者

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   3  スナック『マンマミーア』は十八時から開店する。けれども、常連客となれば別である。『準備中』と書かれた札を無視し、俺はドアを開けた。  お、作者のやつ、やっと物語を進めはじめたな。俺は自分のことのように喜び、あたりを見まわした。  表向きは『準備中』とあってか照明を抑えてあり、ひっそりとしている。カウンターのうしろには、色とりどりのボトルが並び、そこに異国のものと思わしきラベルが貼ってある。 「あら、今日はまた、ずいぶんと早いのね。まだ、十五時よ」 「いやー、ママの顔が見たくなったのさ」  時代感覚がズレてやがる。作者のセリフまわしに、俺は辟易しそうになった。黙りこむわけにいかないので、仕方なく言ってやったが。おまけにウインクつきだ。うう、寒気がする。
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