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「まあ。でも、お世辞を言ったからって安くはならないわよ」
ママと軽いあいさつを交わし、俺は奥の席に着いた。
このスナックに通いはじめて約半年。俺はすっかりここの常連客と化していた。だから、このようにして開店前から堂々と店内に入ることが許されている。
ありきたりな流れだな、おい。駄作臭がプンプンするぞ。ま、今の作者の腕じゃ、これが限界なんだろう。
「ところで、ご注文は? いつものでいいのかしら?」
「あ、ああ、それで」
とっさにこう答えたものの、ある疑問が浮かぶ。いつもの? なんだそれは? 俺は知らないし聞いてないぞ。……もしや、作者のやつめ、またも詰まりやがったな。
やっぱり。ママは迷い箸のように手を動かしつづけ、一向にボトルを選ばない。
とんだぬか喜びに終わったな。小さな溜息が自然と漏れた。
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