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●六月十三日
どうにかしようとして、失敗することは長い長い人生においてよくあることだ。
……いったい、私はなにをしているのだろう。こんな慰めになるようなならないような陳腐な言葉を並べ立て、自らを慰めようとして。なんという愚の骨頂!
あれからどうにかして、スナックバーを舞台にした小説を書こうと思いつき、善は急げよろしく筆をとった。最初のうちは、キーを叩く音がリズミカルに響いたほどだった。が、数分も経たないうちに、進まなくなった。
やはり『最期』というお題が、物語の進行を邪魔する。ええい、忌々しい。
最期。さいご。サイゴ。SAIGO! なにか、なにか、いいアイデアはないのか。『最期』を使った、読者を引きつける斬新なアイデアは! 気づけば、私の手はガタガタと震えていた。自分の無能さにいら立ち、締め切りに焦り、パニックを起こしそうになっていた。
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