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「……電波わるっ」
莉沙は形の良い眉を寄せて携帯電話のディスプレイを確認した。
画面中央には通話中の文字が表示されており、電波状態も悪いわけではなさそうである。
充電器はつなげたままなので、充電切れでもない。
「もしも~し」
携帯電話に向かって少し大きめの声を発してみるが、返事はない。
しかし、またノイズが聞こえて来た。
『ジ……ジジ……』
ノイズの向こうに微かに声がするのだが、言葉を聞き取れるほどの大きさではない。
「ちょっと遠くて聞こえないんだけど! 何?」
親が起きて来ないギリギリの声を出してみる。
莉沙は少しイライラしたように携帯電話を右手で振り、もう一度耳にあてた。
『ジジ……ジ…』
相変わらずノイズが聞こえ続けている。
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