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『お…かあさん……?』
先ほどの笑い声から一変、舌足らずで幼さの残る男児の声。
通話は途切れておらず、違う人間と通話をしているはずがない。
だが、相手の家に弟はいないはずであり、全くこの声に聞き覚えがない。
「誰!?」
強めの声を出したが、わずかに掠れた。
莉沙はそんな自分自身に苛立ち、思わず唇を噛んだ。
イタズラにしても、度が過ぎている。
一度小さく咳払いをし、今度こそしっかりとした声で言い返す。
「何なのよ! いい加減に……」
『お…かあさん……?』
いつもは莉沙が相手の言葉を途中で切るが、その時、莉沙の言葉は相手の声で打ち切られた。
明らかに今まで会話をしていた相手とは別人の、どこか湿ったようによどんだ、男児の声で。
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