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そんじょそこらのホテルには負けないんじゃないか、と思う程の…学校だということを忘れさせるエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターなのに土足では踏み込んではいけない気さえしてくる。
それに加え天井を見上げれば、豪華過ぎるシャンデリアがぶら下がっているのだ。
「…なあ」
する事も無いからと壁に備え付けられたボタンを眺めていた剱汰に、不意に声を掛ける。
「はい」
「剱汰、お前は…」
背中越しに話し掛けてくる勍汰に耳を傾けようとした最中。
タイミング悪く到着を知らせる音声案内の声が、エレベーターの室内に静かに響く。
[ 到着致しました ]
音声案内に遮られたせいか突然黙ってしまった勍汰に、振り返り声を掛けた。
「勍汰…?」
「やっぱ、何でもねー。行くぞ」
「…そうですか」
ぶっきらぼうに応え、自動的に開かれた扉からそそくさと出て行く。
正直、勍汰が何を自分に話そうと聞こうとしたのかは気にはなるが問い詰めないのがずっと前から二人の間にある暗黙のルールの様なモノ。
相手が話したい、聞いて欲しいと思うまで待つのはどんな関係性になろうとも今も昔も変わらないのだ。
エレベーターを降りれば、赤い絨毯が真っ直ぐと一直線に伸びた床に敷かれている。
「あそこか?」
「多分、そうでしょうね」
恐らく金で出来ているであろう、ライオンに似た動物の象が付けられた扉を遠慮がちにノックする。
コンコンコン、と数回程度ノックすると直ぐに中から男性の声が返ってきた。
「―――どうぞ」
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