- 壱 話 -

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見ない顔だな…と細い顎に手を宛がいながら興味有り気に勍汰、剱汰の順に交互に顔を食い入る様に見つめる。 オマケに二人揃って良い顔してやがる、とまるで品定めでもするかの様にジロジロと見るのを止めないのだ。 流石にあからさまに見らるのは気が休まない上に、後ろに立っている勍汰も黙っては居るが徐々に苛立ち始めていた。 「……すみませんがあまり見ないでもらえませんか?」 「あ、悪いな」 そう言うと我に返ったのか初対面にしては、近すぎる距離を一定の距離に戻す。 「そういや、結局何だ?お前等」 「改めまして、今日からこの学園に通う事になった、僕は茅間剱汰です。そして後ろに居る彼が茅間勍汰です」 「茅間…?ああ!お前等双子か。どうりで似てるわけだ」 漸く二人が転入生だという事を理解し納得したらしく、一人頷いていた。 そんなこんなで最初こそお互い良い印象だったとは言えないが、次第に黙っていた勍汰も彼と話すようになったのだ。 気前良く授業も無いからと、二人で行く筈だった理事長室まで案内してくれたのだった。 「―――此処が理事長室だ」 後は分かるだろ?と聞かれ剱汰が頷けば「じゃあな」と最後はあっさりと帰って行った。 「そういや、あいつの名前聞いてねーな」 「…どうしましょう。お礼言わなきゃいけないのに…」 「お前はまたお礼かよ」 「勍汰。お礼は大事なことですよ?」 「あーはいはい」 長くなると後々面倒だと分かっているからこそ、余計な事は言わず引き下がる。
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