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中からは高過ぎず低すぎない心地のいい声が聴こえ…直後、扉が独りでに開かれた。
「さあ、どうぞ」
奥の机で腰掛けていたのであろう腰を上げ、軽く両手を前に広げながらわざわざ出迎えてくれる。
「…失礼します」
「しつれーします」
お世辞でも普段から礼儀正しいとは言えない勍汰だが、珍しく挨拶の言葉を口にする。
言われるままに二人が中に入るとそこは―――最早、豪華という言葉では言い表せない様な光景が飛び込んできたのだ。
予想外の光景に流石の剱汰も言葉が見当たらず立ち尽くしていると、声を掛けられた。
「立ったままで、どうした?座りなさい」
その声に軽く現実逃避にも似た状態だった意識が、はっと目覚める。
「…あ、すみません」
傷ひとつ見当たらない綺麗なソファに遠慮がちに腰掛ける剱汰に続いて、勍汰が内心躊躇いながらもやはり遠慮はせずどっさりと腰掛ける。
二人が腰掛けると同時に今度は彼が席を離れ、奥の部屋へと姿を消して行ったのだ。
静かな空間の中で何も言わずただ彼を待つ。
仕事柄普段から頻繁に使用している筈なのに、綺麗過ぎる故にか何処か生活感が感じられない。
そんなことを感じながら物思いに耽っていると、奥の部屋から出て来た。
何やら手にはどうも彼には似合わない、3つの珈琲カップといくつかのお茶菓子が乗ったトレイが。
「お待たせ」
まさか理事長が自分達にお茶を出すなんて予想もしなかった展開に驚き、慌てて断ろうとした。
「いえ、あの僕等は」
「こーいうのはな、黙って貰えばいーんだよ」
「勍汰…」
本当に遠慮という言葉を知らないかの様に、机に置かれたカップに早速手をつける。
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