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「――ハル!!」
耳元で叫ばれ、俺は飛び起きた。同時にあの赤い部屋が消える。
動悸が止まらない。頭がガンガンする。上手く息が吸えず、ハクハクと口を動かす。
何で俺は生きてるんだよ、皆は、家族は皆死んじゃった、殺されたのに、俺だけ……ッ!!
「篁ッ……! ごめ、こわいっ……!!」
おそらく俺の異変に、部屋まで来てくれたんだろう。ベッドの端に腰かけていた、同室で友人の篁(タカムラ)の肩を借りる。
息がなかなか整わなくて苦しい。
あれは、無差別連続殺人事件、と言われるものだった。俺の家族は、偶然、本当に偶然、犯人に殺された。
それなのに俺は、1人だけ生き残った。生き残ってしまった。
天涯孤独で、連続無差別強盗殺人事件の唯一の生き残り。
それが俺に押し付けられた称号だった。
苦しい。嫌だ。独りは嫌だ。苦しい。誰か、
「ハル、ちゃんと息して! ビニールいる!?」
「ヒュッ……ハ、大丈、夫やから……ッそば、おって……!!」
「いるから! 息しないと死んじゃうだろ、ほらゆっくり息吐け!」
背中をさすりながらそう言う篁に、段々落ち着いてきて、言われた通りに息を吐く。
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