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コツコツと今までの激闘を感じさせないほどに軽快な足取りで、俺はまるで散歩にでも行くように廊下を突き進んでいき・・・・その先、最奥の突き当りにある大部屋の大きな樫製の固い扉の前で立ち止まる。
「着いたな。意外と目標の前に来てみるとなんとも呆気ないものだ・・・・」
中からは人の気配が2人ほど、それと鼻を刺すような甘い、咽るような獣の様な強い匂いが入り混じった何とも表現しにくい嫌な生ぬるい空気・・・・。男と女の匂いが入り混じった淫靡な空気。思わず顔を顰めるが、顔を顰めでもしないと精神的にやってられない気持ちにもなる。人が壮絶な殺し合いを演じたと思えば、敵の大将は女と情事の最中。これほど締まらない終り方もそうそうあるまい。
「・・・お楽しみ中か。だが・・・・俺にはそんなこと関係がない・・・・・待つ義理などもない・・・殺るか・・・・」
ーーーキィ・・・
樫製の扉をゆっくり静かに開き、俺は部屋の中へと体を滑り込ませる、入った瞬間更に強烈な雄と雌の吐き気を催すような濁った空気を吸い込み、思いっきりかを顰めながらベッドで体を重ね合わせる女の腰から手を離さずに一心不乱に腰を振りながらもこちらを見ずに、その腰を振り続ける豚にも劣る丸々と肥えた中年の禿げた男の汚い背中を冷ややかに眺めながらゆっくりと右手のベレッタを奴に向け射撃体勢に入る。
後は、この引き金を引くだけで終わる。
「ふん、儂が楽しんでいる最中は誰も中に入れるなと言ったはずだが?まぁ良い。侵入者は殺せたようだな。見ての通り儂は忙しい。用件なら後にしろ」
「あ、あ・・・ぁっ!!」
肉と肉がぶつかり合う音が響く部屋の中ソイツは俺を自分の部下と思い込み煩わしそうに追い払おうと言葉を吐き出す。その太った肉体からは滝のような汗が流れ一層と俺の中の嫌悪感に更なる拍車をかけた。
女はところどころ男に抱かれているせいで隠れ、見れないが見た感じ14,5辺り・・・淫らに乱れている様は、嬌声を上げているものの、目の光彩は暗く感情が死んだ様子は心を閉ざしている証拠。どれほどの絶望を見たのだろうか。その声は喜んでいるというより、俺には悲鳴を上げているようにしかどうしても聞こえなかった。
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