4人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
こないだなんて浄明寺ってとこの川に螢がふわふわいて、北海道出身の先生が驚いてた。
「普通にとんでる!」
鶴ヶ岡八幡宮では毎年見るから珍しいって感覚麻痺したのかも。
まぁ、とにかく、話をしていた。
「螢を想像してご覧。螢だよ」
わたしの頭の中では『うかんむり』が荒れ狂っていた。
「はいはい。――贖罪っと」
「ぼくは何もしてない」
だから漢字練習。そもそも話題を振ることが罪じゃない。
「そこで雄の螢を想像するんだ、――求愛行動だから雄しか光らないからなんだけど――たまたまお尻がない螢」
「血まみれじゃないの、雄螢。――弾劾っと」
「妙に心の突き刺さり具合にマッチしてるねぇ。その漢字」
だって裁判関係の漢字だし。
わたしは早く親から飛び出したくて、裁判官を目指してた。
就職率が高そうだし、なにより――罪ってわたし達が生まれた時から出来てない?
最初のコメントを投稿しよう!