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――同刻。
一人の女がコンテナを背に、左足を押さえて空を仰いだ。
脹ら脛からかなりの出血がある。左の脇腹も同じ。
両方、弾丸は貫通しているようだ。
汗が滝のように溢れ、傷に染みる。
「くそったれ……」
女が吐き捨てる。
その顔に苦痛と悔しさが滲む。それに絶望も。
足を撃たれた。同じように脇腹も。
恐らく、鍛えた体とはいえ、もう長い距離を移動することは叶わない。
だからといって捕まるわけにはいかない。
自分は女だ。死ぬ間際の筋肉質で野蛮な傷だらけの体とはいえ、遊ぶには十分だろう。相手はそういう腐った野郎だ。だが、それはプライドが許さない。
それに“目的”を知られるわけにもいかない。
―死ぬしかないか―
右手に握った拳銃の銃口を口に突っ込んだ……。
――怖い。死にたくなんてない。
呼吸が荒れる。涙が溢れた。
左手を拳銃に添える。
目を固く閉じる。強張った肩がグッと持ち上がる。銃口を力一杯噛んだ。
――撃て。
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