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「どうなさいますか?」
ダムが小声で美丈夫に問う。
この先に居るのは、間違いなく討伐対象だろう。
だが、違和感が拭えない。
報告書にあったような極悪人には思えなかった。
「俺だけ行く」
「危険です!」
レオルを止めようと、アスが腕を掴む。
「貴方に何かあったらどうするんですか」
「だが、全員で行けば警戒されるだけだろ。大将とカーリズだとすぐに軍人だとバレるだろうし」
レオルの言に、カーリズとダムは小さく頷いた。
「お前に演技しろって言っても、無理なのは目に見えてる。だったら、俺が行った方がいい」
アスも渋々ではあろうが美丈夫から手を放した。
「向こうが抜刀したら、躊躇わずに出てこい」
そう言い残し、レオルは今まで声のしていた方へと歩んで行く。
ガサガサとわざとらしく音を立てて進めば、こちらを向く気配が二つ。
見遣れば、若い男女が向き合い、女の方が目に涙を浮かべていた。
「ランコ、謝罪はもういい。悪いのはお前じゃねぇから。ゆっくり、俺の後に来い」
女は頷いて、男の背へと回った。
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