初春大月(ハツハル ノ オオツキ)

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 欲しい。  直感的にそう思い、女に手を伸ばす。  その瞬間に、女は怯えた表情を見せ、震えはじめた。 「ランコ!」  異変に気付いた男が、女の頬を優しく両の手で包み込む。 「ランコ、大丈夫、恐いことは何にもねえから。俺達が守るから、な。こっちを見ろ」 「や、やだっ」 「うん。お前の嫌がることなんてしないし、させない。後で、うんと甘いもん食うだけだ。エーリアも一緒にな」 「エーリア、さんも?」 「そうだ。いい子だなぁ、ランコ」  女が、緊張を解く。  頬を濡らす涙を拭い、男は包み込むように女を抱いた。 「命が惜しくなったのでしょうか」 「違うな。あれは純粋に慣れない異性に怯えているだけだ。手籠めにされた女がああいった反応をする」  カーリズとダムの会話に、レオルは伸ばしていた手を下ろし、女を見る。  自分に向けられた嫌悪や憎悪、怯えと違い、心から安堵したその表情。  レオルは酷く苛立ちを覚えた。  あの娘を手に入れたい。  それにはあの男のように信頼されなければならない。  だが、今は近付くだけで怯えられる。  そんな状態では、信頼どころか、嫌悪されるばかりだ。
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