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この物語の主人公は、あるいは
世界に遅れをとっていた、
日本競馬という事になるかもしれない。
日本競馬は、同じ時代のクラシック世代に、三頭の馬を生み出した。
その後、TTGと呼ばれるに至る彼らのデッドヒートは、その後の競馬史に名を連ねる全ての『三強』という言葉の祖になっていった。
テンポイント、
トウショウボーイ、
そしてグリーングラス。
彼らの活躍は、見るもの全てを熱くした。
ある者は
トウショウボーイの圧倒的な力に熱狂し、
ある者は
テンポイントの壮絶な最期に涙し、
またある者は、
見事にその世代の幕引きを、自らの有馬記念の勝利という最高の形で結んだグリーングラスに
称賛の声を浴びせた。
この三頭達の活躍こそが、あらゆる意味での日本競馬を作り上げた、と作者は思うのだ。
そして、その内の一頭、トウショウボーイの血は
脈々と受け継がれていく。
次の世代へ、次の世代へと。
イセノトウショウ、という馬がいた。
競走馬としてたいした成績を残せなかった彼女は、
彼女自身の子供にその夢を託した。
父、ザグレブ
母、イセノトウショウ
母父トウショウボーイ
後にコスモバルクと名付けられる彼は、
彼の祖父のライバル、テンポイントが志し半ばで達成できなかった海外G1制覇という夢を
シンガポールで成すにいたる快挙を遂げた。
ちょうど、ちょうどその頃だろうか。
日本競馬が本気で『世界』を狙いに行くようになったのは…………。
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