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その敗戦に心を失い、
日増しに高まっていく
『世界』を取りたい
という気持ち。
日本の競馬ファンたちは、
救世主(メシア)の登場を期待した。
その『暴君』や『英雄』の血を継ぐものに対して。
そんな中、一時は『道営のエース』とまくしたてられた彼が
アイルランドから帰国する。
《G1訪ねて三千里》とはよくいったものである。
道営小さな競馬場、旭川でデビューし、
道営所属のままクラシック競争すべてに出走し、
その後も果敢にG1に挑み続け、五歳の夏には海を渡り、
有馬記念には六年連続での出走。
その後もアイルランドで現役続行を目指したが
2011年二度めの骨折で完全引退。
門別競馬場で引退式が行われた。
コスモバルク。
最後はもう誰も種牡馬としての価値を認めなかったこの馬から、
世界を目指す馬が出るとは
いったい誰が想像しただろうか。
この物語は、そのコスモバルクの子にして
その年のクラシック『三強』の一角である競走馬リターンオブバルクと
それを支えた
山本牧場の牧場主、山本勘助や
その周辺の人間関係を描いた物語である。
昇っていく坂の上のゴール板に
もし、一つの希望があるとすれば、
ただそれだけを見つめて、
英雄達はその坂を駆け昇っていくだろう…………。
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