strawberry kiss

2/10
170人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「お前さぁ、何しに来たの?」 「は?コイツ迎えに来たに、決まってんだろー が」 東京から遠く離れた地で繰り広げられる、保護者 VS 恋人。 公演の為に訪れた大分で、況してや自分の誕生日 に。 「二人とも、落ち着けよ」 何で俺が、気を使わなきゃなんねーの……なんて。小さくため息を吐いてみても。 やはり自然と緩む口角を、抑える事はできなくて。 不毛な争いに終止符を打つべく、牽制しあう二人の間に入った。 ―― 事の始まりは、数十分前。 「メールくらい寄越せよ、バカじん」 入念に行われていたリハーサル後。 久しぶりに弄る携帯は、想い人からの痕跡を受信 しておらず。 機械に罪はないが、少々乱暴な扱いをしてしま う。 ……悪い、仕事なんだ。 数日前、冷ややかに告げられた台詞。 忙しいのも、あいつの置かれてる事情も知ってる から。 会いたい…なんて我が儘、通るわけないことは理解 していたし。 むしろ、予想の範疇だったけれど。 「かめ、機嫌悪ーい」 それでも、どこかで期待をしていた。 そんな浅はかな自分を、あっさりと見透かされたのが悔しくて。 「…別に。普通だしっ」 隣に気配を感じながら、視線は携帯に向けたまま唇を尖らせると。 たっちゃんは、髪を掻き乱すように俺の頭を撫で る。 「どこがだよ。どうせ、あかにしだろ?」 その行動が、妙に優しくて。 「忙しいんだと。俺の誕生日なんか、忘れてん じゃね?」 ぽつりと漏らした言葉と共に、不覚にも涙腺が緩 んだ。 .
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!