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水溜まり
何処までも続く森の小道に小さな水溜まりがあったの。
あまりにも綺麗でずっと眺めてたの。
水溜まりの中の世界はキラキラ輝いていて、この世界より明るかった。
いつもは嫌いな自分の顔もその時はとても上品で美しく見えた。
水溜まりに映る逆さまの街、逆さまの森、逆さまの私。
何もかもが水溜まりの中で美しく生きていた。
私は水溜まりの自分が羨ましかったの。
そっと水面に触れたら、たちまちそこは逆さまの世界。
足元を見れば昔の私。
こちらから見た私はやっぱり上品で美しく見えた。
そっちの私は私を見下ろしてから去っていったの。
私は水に映る虚像。
あの子が居なくなったら私はここから消えてしまう。
あの子は私の姿を奪って行った。
今はどうしているか分からない。
この世界での私の存在は消えてしまったの。
あの子は二度とここに来なかったから。
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