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忘却の日
今週もまたあの日がやって来る。
忘却の日。
その日は毎週定期的に複数の人々が選ばれる。
今週はついに僕の番。
朝が来たその時から僕はいないことになる。
存在を忘れられるのだ。
扉を開けてお母さんとバッタリ会っても
「あら、お客さん?いらっしゃい」
でも妹だけ僕のことを覚えてたんだ。
「ねぇお母さん、お兄ちゃんは?」
「あら、嫌だ。あなたには弟がいるのにお兄ちゃんが欲しいの?」
僕が忘れられても問題ない。
変わりの者が必ず現れるから。
次第に妹も僕の存在を忘れていった。
仕方ないんだ。
忘却の日は忘れられるだけで誰も思い出さない。
今日は処分の日。
誰も覚えていないことは、いないことと同じ。
必要ないのと同じなんだ。
熱い焼却炉に連れていかれる。
仕方ないんだ。
この町は昔からそうだから。
きっともう“変わりの者”意外はいないだろう。
妹も、お母さんも本物かなんて覚えていない。
もうすぐ僕の出番だ。
忘却の日。
その日が可燃ゴミの日と同じ日ということは誰も思い出さないだろう。
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