突然変異

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「サメが悪魔になるなんて聞いたことがない! その尖った黒い耳、なんて醜いんだ!」 「ごは、あるが、あるとう。うれい、よ」 「近寄るな! 研究所は潰させない……お、俺達と戦うってんならやってやろうじゃねーか!」 「あく、あくし、なでる、て。ぶらし」 「この“   ”め!」 「ぼく、ぎ。ちが、なまえ」 痛い。痛いよ。 ありがとう、嬉しいよって。 言いたくて同じなれたのに。 どうして叩くの。 手も足も、同じ形だよ。 いつも「じっけん」だって、優しく触って寝かせてくれたのに。 どうして“   ”なんて言うの。 言葉、分からない。 すごくかなしい気持ちになる。 どうして、どうして。 頬があつい。 口の中から変な味がする。 吐きだしたらじぶんの歯と血が混ざって床に転がった。 むこうの水槽で仲間たちが重なりあって眠っている。 せびれのない、ぼく。 今から戻れば、また撫でてくれるかな。 今朝ごはんをくれた人がきてくれた。 言わなきゃ、ありがとうって。 言わなきゃ、おいしいよって。 「ギズ、どうしてこんな事に」 なまえ呼んでくれた。 笑ってくれた。 伸ばした手のかわりに細長いものが肩を貫く。 「ぐ、ぁ……あぁあぁぁーー!! いた、よぉ。やめっや、やだ、やだぁ!」 痛くて、あつくて。 やめてって言ったのに。 どうして。 「穢らわしい。お前は――」 笑いながら言うの。
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