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(一……二……三……ふむ四人か)
冷静に獲物の数を数えたジュウべエだったが、その輝かしいばかりの眼光はみるみる萎れていった。
(どれもこれも弱そうではないか)
目の前に居る人間のうち、立って手に持つ短剣を遊ばせている三人は筋肉は多少あるようだがキドウマルの美しく見える並々ならない筋肉と比べると月とスッポン。
おまけに顔はヘラヘラとしまりが無く、着ている物も汚らしい。
とはいえ十数年キドウマルのお下がりである服を着ているジュウべエにそれを言う資格は無いかもしれない。
そんな三人には興味も沸かなかったが、すぐ側で地面にへたり込む長髪の人間は白色で痩せこけているように見える。
この男、女という存在を知らず、目の前で繰り広げられている野盗に襲われ絶体絶命の女性の姿を「弱そうな男だ」とばかりに眺めていた。
「散々逃げ回りやがって」
「お前さんが雇ってた護衛のあの男……名前なんて知らねぇが仲間に片付けられてる頃だろうよ」
「まぁ身ぐるみ剥いだ後にたっぷりと楽しませてもらうぜヘヘヘッ」
「ひッ……」
獲物を前に前口上をベラベラと喋っている男達に怯えて後退る女。
立ち合い中にベラベラ喋るなど三流がやる事であり、自分や師は絶対にしなかったと思いながら女の胸を見ながら「随分と脂肪で膨らんでいるな」と訝しげに首を傾げる。
後退る女にその姿に嗜虐心を擽られるのかゆっくりと近付いていく男達にその様子をすぐ側でまじまじと見つめるジュウべエ。
端から見れば可笑しな光景だが、どれもこれも当人達は本気である。
そして珍しい物に見取れて反応が遅れたジュウべエの手に後退りを続けていた女の手が重なり、続いて二人の視線が草の間から交わる。
(……ふむ)
「ひ、ひいやあぁぁッ!!」
ばれたとは思うもさほど焦っていないジュウべエに比べ、草の間からこちらを覗く謎の目に気が付いた女の驚きは一入(ヒトシオ)のものであり、辺りに甲高い悲鳴が響き渡る。
そして距離を詰めていた男達、自分達では無く後ろの草を見て悲鳴をあげた女を不思議そうに眺める。
(今更姿を隠しても意味は無いだろう)
女に自分の姿がばれたと悟ったジュウべエはそのまますくりと立ち上がる。
その姿を見て三人の野盗と女は肩を跳び上がらせた。
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