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ここで普通の感性の人間ならば同族殺しの罪悪感やら何やらで気分の不調を訴えたりする事が多いのであろう。
しかしジュウべエそんなことは無く、目の前に転がる三つの骸を眺め思った事は「弱すぎる」の一言だけだった。
この男ジュウべエ、「人であろうが何であろうが向かってくるのならば殺すだけよ」と相も変わらず師の言葉に対して忠犬振りを発揮し、武器を構えた男達もそんじょそこらの動物と大差ない物と考えていたのである。
(師ならばどうなっていたのであろうか……?)
ジュウべエは余りの呆気なさに男達が自分の師であるキドウマルであったら自分はどうするかを思い浮かべる。
そして身震い一つ。
(もしそうならば俺は生きる為に恥も外聞も捨てて逃げていただろうな)
真剣同士の立ち合いは師曰く「殺す為の試合」らしい。
もし自分が真剣を構える師を目の前にすれば、自分は構えもせず逃げ出さなければならないとジュウべエは一人心に決める。
好戦的に見えたジュウべエの意外や意外の臆病な面であったが、格上の相手に挑み無様に死ぬことを察知する事も一流になれるか二流で止められるかの違いなのである。
「あ、あのぅ……」
ここで忘れ去られていた女の登場。
背は百六十程度で顔は美人というよりは可愛らしいの方向性を持っており、胸もそこそこ大きくはだけた服の隙間から見える素肌は何とも艶めかしい。
……と、普通の男ならば鼻息荒くするのであろうが、女を知らぬジュウべエは特に何かを感じる事も無く仏頂面で女の方を見た。
「助けて頂きありがとうございます」
(助ける……?)
命を救ってもらった事に対して丁寧なお辞儀と礼を言う女であったが、礼を言われた本人はその気など全く無く、言われて漸く自分が成り行きでこのひょろひょろとした男(女)を助けたのだと気付いた。
「ただの成り行きだ」
「そうであっても私は助けられました。それにしても凄い腕前ですね」
今まで褒められた事など一度も無かったジュウべエ、普段の仏頂面が微かに解れて思わず笑みが浮かんでいる。
確かに添え物無しに人の首を刎ねるにはかなりの力かかなりの技量が必要になる。
それに併せて瞬く間に三人を斬り伏せた疾風の如き早業。
いやはやこの男、存外に規格外なのであろう。
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