三 小さな覚悟

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「それは冗談ですかジュウベエさん?」 「流石にそりゃないぜオッサン」 「お兄さん!」 「うえッ」  頬が引き攣り苦笑いの状態になっているミーシャに呆れ顔のムイ。  そんなムイのジュウベエ「オジサン」発言に直ぐさまミーシャは訂正を加え、その折に掴まれた襟首を引っ張られたムイは潰れたカエルの様な声を上げる。 「冗談などではない」 「「…………」」  無言、痛々しい程の無言であった。  師と別れ山を下り漸く他人に露見したジュウベエの常識知らずであったが、ジュウベエに恥ずかしさなど微塵も無い。  事実「知らないものは知らない」のであるから聞くのである。  ジュウベエが「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という言葉を知っているかは別として、今までそれを実行してきて何を今更という事である。 「えっと……妹っていうのは夫婦から産まれた二人目の女の子……でいいのかな?」  なんと優しき女性であろうか。  普通の者ならば「何いい歳して何つまらない事言ってんだ」と流される質問を丁寧に教えようとしているミーシャ。  人によっては馬鹿にされていると思えるかもしれないその行為もジュウベエにとっては普通である。  ということは彼は"馬鹿"ということか、いや事実世間知らずの"馬鹿"なのであった。 (夫婦から産まれた二人目の女の子……女の子とは何だ?)  しかしただ聞くだけではない、ジュウベエ自分で考えることが出来る馬鹿である。  だが直ぐに女という存在にぶつかってしまっていた。 (女の子……夫婦から産まれる……ふむ。夫婦から産まれるのは雄と雌、雄は男で雌は……雌はまさか女の子なのか!)  かなり当たり前の事に一種のカルチャーショックを受けているジュウベエだが、一人で正解を導いて来る辺り正真正銘の馬鹿という訳ではないらしい。 「女の子とは雌の事か?」 「あ、え、えぇそうです」 「うわーそりゃないぜオッサン」 「お兄さん!」 「うえッ」  疑問が晴れてすっきりとした様子のジュウベエと苦笑いを浮かべるミーシャ、そして同じようなやり取りをしてまた首を絞められるムイであった。
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