救いの手

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 雲ひとつない青空、桜舞う通学路、歓喜に溢れる親子。僕はそれに見向きもせず学校へ走る。 「入学おめでとう」と祝いの声をかける先生、クラスが記されているA0の3枚の紙、昇降口でそれを確認する生徒。 「お、村木。今学年も頑張ろうな」  先生のひとりが自分に気づく。なので軽く首をうなづかせ校舎の中に駆け入る。  校内に入っても生徒で賑わっている。さぞかし久々に合って「春休みどうだった?」など話しているのだろう。うらやましいばかりにカチリと奥歯をかみ締め、一階の教室群を抜ける。  体育館への出口が見えたころに右に曲がる。そして現れた階段を一段飛ばしで上がった。息切れも忘れて階段を抜けると、一枚の重苦しい鉄の扉が現れる。少年はふぅっと一息はいて、それを力いっぱい押し開けた。    さびが鳴らす甲高い音は、まるで僕に対する最後の警告ブザーのように、踊り場に鳴り響く。だが、彼の意思は変わらない。
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