如月陽司

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 ……で、案の定……、とんでもない暴風雨の中、俺は両手にデカい袋をふたつずつ提げていた。  奏江もちょっと小さめの袋とバッグを左手に持ち、右手で傘を差している。  ベージュでフリルのついた傘が今日の服装にばっちり合っているのはいいとしても、その傘じゃあ、この風の中ふたり分の雨を防ぐのは不可能だ。  ちなみに俺の傘は胸ポケットに引っ掛けてあるから、邪魔になるし太股がやたら冷たい。  おまけに明らかに荷物が多すぎる。  奏江のヤツ、今夜の食材だけじゃなく、自分とこのもまとめて買ったらしいな。  もちろんここでそんなことを突っ込む気はない。というか、そんな余裕はない。  時折、けっこうな重さの袋が風に持っていかれそうになる。  奏江の持つ傘も、もはや傘の役目は果たしておらず、雨に濡れた髪が顔に貼り付く。  ……どう見てもデート中のカップルの姿ではない。  やっぱり雨嫌いだわ。俺……。  ただ、その気持ちは俺自身を否定することにつながるから若干ブルーになる……。
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