如月陽司

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 それで、そのとき貸した服を会社で返してもらったのがちょっと噂になって、気付いたらそのまま付き合うことになった……。  同僚からは『弱みにつけ込んだ』とからかわれ、奏江もちょっと機嫌を悪くするとそのことを持ち出してくる。  まあ明確に反論できないのは仕様がない。下心がゼロじゃない時点で俺の負け確定だ。  …………そうか……、もう1年か……。  って、感傷に浸ってる場合じゃない。  次の休みに奏江が手料理をご馳走してくれることになってるのをすっかり忘れていた。  そうなると散髪に行かなきゃいけないのだが、今日しか時間はないな……。  ……赦せ、幸一……。  心の中で呟き、行きつけの散髪屋に予約の電話を入れた。  俺が家にいたからといって確実に晴れるわけじゃないし、運がなかったということで……。
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