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最初の数ページは国語のノートだったけど、途中から日付が入って日記のようになっていた。
冒頭には「八田君へ」と書いてある。
八田? そんな名前のヤツ、いたっけ?
同じ学年にはいなかった気がする。
確か、鳥原は吹奏楽部だったはずだ。部の後輩の男子との交換日記だろうか?
読み進めていくと、どうやら鳥原がアンネの日記を真似てノートに「八田鴉(やたがらす)」という名前をつけたらしいことが分かった。
アンネ・フランク。
『アンネの日記』という映画を観たことがある。
13歳の誕生日プレゼントにもらったノートに名前をつけて、架空の友人に手紙を書くように日記をしたためたユダヤ人の少女。
第2次世界大戦の時、ナチスのユダヤ人狩りから逃げて隠れ住んでいたけど結局見つかり、強制収容所で病死した。
僕が観たのは、そのアンネの日記が実はアンネの父親が書いたものかもしれないっていう、ちょっとしたミステリーっぽいものだったけど。
盗み読みはいけないと思いながらも、目が次の文を追う。
耳は教室の外に集中する。
誰かが来る気配を感じたら、このノートをすぐに机の中に入れて知らんふりしよう。
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