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僕の両親が離婚したことと、鳥原も両親が離婚していてお父さんが出て行ったことが書かれていたのには、どきりとした。
『眞柴君はどうだったのかな。
お母さん出て行ったとき、どう思ったんだろ。』
『ひょっとしたら、眞柴君も、うちの妹みたいに泣いたのかもね。』
いや、違うよ、と僕は心の中でノートの中の鳥原に話しかける。
僕も鳥原と同じ。
父さんと母さんが離婚しても泣かなかった。
僕は、映画監督だった父さんの影響で映画を見てきた。
自宅にはシアタールームがあって、映画館ほどではないけど大きなスクリーンがあった。
公開しているやつは映画館で見て、古いものは、シアタールームで観る。
「映画は芸術でも娯楽でもない」が父さんの口癖だった。
「自分の思いを伝えるために観客に分かるように作った映画は二流。
観客に媚を売るような映画は三流。
映画評論家に媚を売るような映画は四流だ」
と、よく僕に言っていた。
じゃ、一流の映画はどんなものと言うと、「一流の映画は、人生そのものだ」。
どういう意味か詳しく聞きたかったけど、父さんから僕へ出された謎みたいな気がして、今でも聞けていない。
古今東西たくさんの映画があるけど、父さんが一流だと認めた映画はあったんだろうか。
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