The changing world

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映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』のセリフ。 家から離れて、この東防中に入って、この言葉の意味が分かった気がする。 どこまでも女優でありたかったのだろう母さんと、映画よりも子供を選んだ父さんと。 距離と時間を置けば、渦中にいた時には見えなかったものが見えてくる。 『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』は、不器用で要領の悪い少年の成長物語。 不遇な境遇に置かれても、宇宙に飛ばされたライカ犬を思っては、少年は自分を奮い立たせた。 自分の不幸なんて、なんてことはない、って。 まだ宇宙技術も発達していなくて、有人宇宙飛行なんて出来なかった時代。 初めて宇宙に飛び立った生物……ライカ犬は地球に戻ることなく、宇宙で孤独に死んだ。 身動きも出来ず、何度も何度も地球を周り続けた末に。 『スプートニクに乗って、宇宙に飛ばされたライカ犬のことを思えば、僕の不幸なんてちっぽけなモノだ』だ。 だから、泣かなかった。 僕には父さんも弟も、友達だっている。 住む家だってあるし、食べる物だってあるし、空気だってあるし、自由に動ける。 何より僕は地球にいる。 だから、鳥原。 苦しかったし、辛かったし、父さんにも母さんにも裏切られた気がしたけど。 生まれた惑星にすら見捨てられて死んでいったライカ犬に比べれば。 きっと、僕の不幸なんて、なんてことないモノだったんだよ。 日記は5月8日で終わっていた。 僕はノートを静かに閉じると、鳥原の机の中に戻した。
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