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長太郎好みの話題ではないことを知りながらも、僕は話を進めた。
別に身長で負けた悔しさからってわけじゃないけど、どこかちょっと意地悪してやりたい気持ちがあったからだ。
勧善懲悪モノだけがヒーローものの全てじゃないことを伝えたかったからかもしれない。
「でも、復讐に狂ってるとかそういうんじゃなくて、残忍なのは悪党に対してだけで、他の人には優しいんだ。壊れた親子の中を修復させたりさ。
それに、悪党に対して容赦ないのは、それだけ酷く惨殺されたからであって……」
長太郎は何も言わずに聞いている。
「ダークでスタイリッシュ。
暗いけど、切なくて悲哀に満ちた作品でさ、ラストシーンなんか涙モノ。
それに、主人公役の人、昔の有名なアクション俳優の息子だったらしいんだけど、空砲だったはずの銃に実弾が入ってたとかで、撮影中に亡くなって……」
そこまで言って、調子に乗りすぎたと思った。
ここ、東都防衛学院は新しく設立された学校で、防衛基礎学を学ぶことが出来る。防衛要員としての教育、それから戦闘技能も磨く。だから、銃だって扱う。
僕らの年齢で銃を扱ったり軍事訓練が出来るなんて、きっとこの学院ぐらいだろう。
そんな身近な非現実に触れることが出来るから、という理由で僕はこの学院を志望した。
戦うことに関する知識を身につけておいて損はないと思ったし。
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